新型コロナは「若い世代」でも「喫煙」が重症化リスクに

 新型コロナの新規感染者数はかなり減少してきているが、重症化したり亡くなったりする患者はまだ多い。基礎疾患がない20代から40代の若い世代でも、肥満だったりタバコを吸っていたりするとリスクが高くなるようだ。

肥満と喫煙歴がリスク要因

 東京都は、2021年9月2日に専門家によるモニタリングコメント・意見【感染状況】(PDF)を発表した。その中には第61回のモニタリング会議でのコメントとして「20代及び30代でも新たな重症例が発生している。肥満、喫煙歴のある人は、若年であっても重症化リスクが高い」とある。

 最近、米国のカリフォルニア大学サンフランシスコ校などの研究グループが発表した論文(※1)によれば、45歳未満の喫煙者で新型コロナの重症化が顕著に進行することがわかったという。この論文での新型コロナの進行とは、ICU(集中治療室)と人工呼吸器の使用、呼吸数や酸素飽和度などによる重症化の指標、死亡といった臨床的なエンドポイントを指す。

 この論文は、2020年1月1日から2020年5月25日までに発表された新型コロナの患者と喫煙の関係を調べた46論文(対象患者2万2939人)を比較分析した。その結果、46論文で調べた対象患者の23.6%が重症化し、全体の12.7%が喫煙歴(現在喫煙と過去喫煙)のある患者だった。喫煙歴のある患者と非喫煙患者を比較すると、喫煙歴のある患者のほうが重症化したという(21.9%:33.5%)。

 また、喫煙者と非喫煙者で比較した重症化のリスクは、患者の平均年齢が上がるにつれて低下した。つまり、若年の喫煙者ほど重症化リスクが高くなる。

新型コロナの重症化と喫煙との関係を調べた46論文を比較分析したところ、特に45歳未満の若年の喫煙者ほどリスクが高かったという。縦軸が病状の進行、横軸が患者の平均年齢。Via:Patanavanich, Glranz,
新型コロナの重症化と喫煙との関係を調べた46論文を比較分析したところ、特に45歳未満の若年の喫煙者ほどリスクが高かったという。縦軸が病状の進行、横軸が患者の平均年齢。Via:Patanavanich, Glranz, “Smoking is associated with worse outcomes of COVID-19 particularly among younger adults: a systematic review and meta-analysis” BMC Public Health, 2021

 若い世代の間では、新型コロナに感染しても重症化しないという誤った情報が広まっているようだ。しかし、米国の調査(※2)によると若い世代の喫煙者は非喫煙者に比べて約2倍、脆弱だという。

 日本の喫煙率は20代で16.4%(男性27.1%)、30代で19.2%(男性33.2%)、40代で22.7%(男性36.5%)、50代で21.6%(男性31.8%)だ(※3)。男性でまだ喫煙率は高く、新型コロナの感染・重症化・死亡のリスクは男性のほうが高い。若い世代ではワクチン接種が進んでいないが、喫煙者はより一層の感染予防策をとるべきだ。


※1:Roengrudee Patanavanich, Stanton A. Glranz, “Smoking is associated with worse outcomes of COVID-19 particularly among younger adults: a systematic review and meta-analysis” BMC Public Health, Vol.21, August, 16, 2021

※2:Sally H. Adams, et al., “Medical Vulnerability of Young Adults to Severe COVID-19 Illness-Data From the National Health Interview Survey” Journal of Adolescent Health, Vol.67, 362-368, June, 17, 2020

※3:厚生労働省、「国民健康・栄養調査」、「毎日吸っている」「時々吸う日がある」の合計、2019年