「消毒用エタノール」の取扱いでは「火災」に要注意:Fire caution! when you are treating the ethanol.

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19、以下、新型コロナ感染症)の感染予防のために大量消費され、マスクや消毒用エタノールの品薄が続いている。日常生活のあちこちに用意されているように、消毒用エタノールが身近な存在になっているが、ネット上には消毒用エタノールを「自作」する情報が広まっている。だが、エタノールの取扱いには注意が必要だ。

消防庁が注意喚起

 日本薬局方で消毒用エタノール(消毒用アルコール)とは「15℃でエタノール(C2H6O:46.07) 76.9 ~ 81.4vol%を含む」とされている(vol%=体積濃度)。15℃でエタノールを99.5vol%以上含む無水エタノール830ミリリットルに、精製水を混ぜて1000ミリリットルにするとできる。

 水が混ぜられた消毒用エタノールには酒税が課税されているが、ノロウイルスなどに対して消毒効果の劣るイソプロパノール(新型コロナウイルスに対してはほぼ同じ効果)を添加して工業用アルコール扱いにするなどして課税されないようにしている製品もある。この場合の工業用アルコールとは、酒としての飲用に転用できないようにしているアルコール類のことだ。

消毒用エタノールには日本薬局方と書かれ、成分は100ミリリットル中、エタノール83ミリリットルとされている。

 ネット上で散見される消毒用エタノールの自作法は、薬局薬店やネット販売などで一般用医薬品としての無水エタノールを購入し、自分で水を加えて60〜70%の濃度に希釈し、スプレーボトルなどに詰め替えて使うというものが多い。こうして自作する際、危険はないのだろうか。

 東京消防庁は、インフルエンザなどの感染予防用として、消毒用アルコールによる手指の消毒や除菌などにエタノールが使用されるケースが増えてきていることを受け、「使うなら火のない所でアルコール」というページを設け、その取り扱いの注意点をまとめている。

 そのによると、消毒用アルコールには、そのアルコール分の量によっては消防法の中の危険物(第四類アルコール類)に該当するものがあり、揮発成分が引火しやすいなどの危険性があるとしている。

見えにくいアルコールの炎

 第四類のアルコール類は、メチルアルコール(メタノール)、エチルアルコール(エタノール)、n-プロピルアルコール(1-プロパノール)、イソプロピルアルコール(2-プロパノール)の4種類だ。

 消防法でアルコール類の指定数量は400リットルだから、それ以下の量なら取扱いや保管に規制は受けない。ただし、自治体によっては消防法の指定数量以下でも、400リットルの1/5以上(80リットル)といったように独自の指定数量を取り決めた火災予防条例で届出義務などを策定しているところもある。

 エタノールの蒸気比重は1より大きく空気より重い。そのため、エタノールが揮発した場合、その蒸気は低い場所に対流したり、水のように低い場所へ流れていく。扱っている場所から遠い場所に火気があっても引火する危険性がある。

 また、理科の実験でおなじみのアルコール・ランプの火でわかる通り、エタノールは炎の色が薄く、明るい場所では火災発生に気付きにくい。消火は早ければ早いほどいいが、炎が見えにくいというアルコール火災の特徴を知っておくべきだろう。

 もし仮に引火した場合、アルコールの消火法は酸素の供給を断つ窒息消火が効果的とされる。アルコール・ランプの火をフタをして消したアレだ。

 そのため、アルコール火災(油火災=B火災)には、非親水性の泡を使った泡消火器や粉末消火器、不燃性ガスの二酸化炭素消火器を使用することも多い。

 少量のアルコールが燃えただけなら大量の水をかければ消火できる。だが、量の多いアルコールが燃えた場合、水をかけて消そうとするのは水の上にアルコールが乗って火がかえって燃え広がるので危険だ。

 また、泡消化器を使う場合、電気の伝導性があるので感電に気をつけたい。またアルコール度数の高い酒も引火すると火災事故につながり、過去には何度も被害が出ている。消毒用エタノールを使う場合、子どもの誤飲の危険も含め、要注意だ。