古代巨大ザメ「メガロドン」はいつ絶滅したか:When did extinct Megalodon?
絶滅した巨大ザメ、メガロドン(Carcharocles megalodon)が登場する映画があるが、恐竜時代の後に海を支配していたこの最強の捕食者がいつ姿を消したのかは長く議論されてきた。これについては、260万年前までメガロドンがいた可能性があるという論文が出ている。
太古の海に君臨したメガロドン
2018年の夏、映画『MEG ザ・モンスター』というパニック映画が米国で大ヒットした。この映画、絶滅した巨大ザメ、メガロドンが復活してダイバーらと戦うという内容だ。
メガロドンの「メガ」は巨大な、「ドン」は歯という意味だが、その名の通り、軟骨魚類のサメの化石はあまり残らないものの、化石の証拠から推定される大きさは全長18メートル(ホオジロザメは6メートル程度)に達し、その歯は現生のホオジロザメの約3倍ほどの大きさだ。
メガロドンの顎の咬合力は、推定で10万ニュートン以上と推定されている(※1、ヒトの咬合力は約1400ニュートン)。恐竜絶滅後の世界中の海に君臨し、クジラやアザラシなどを捕食していたと考えられている(※2)。
映画のように復活すると大変なことになるが、メガロドンは約260万年前に絶滅したと考えられ、その時期を正確に知ることで当時の気候や生態系の変化を類推することが可能だ。
これまでの研究では、メガロドンが絶滅した理由について、生態系の食物連鎖がカスケード式に影響し、獲物が少なくなったからとされてきた。ただ、軟骨魚類のサメの化石は残りにくいため、絶滅理由や絶滅時期を含め、長く結論が出てこなかったという。
少し前になるが、これについてスイスのチューリッヒ大学などの研究者らが、最適線形推定(Optimal Linear Estimation)という統計手法(※3)を用いて化石や論文などから絶滅時期を類推したという論文(※4)を発表している。この研究グループによれば、生態系の頂点にいた捕食者メガロドンが絶滅した後に巨大クジラ類が繁栄したという。
ただ、メガロドンの獲物はかなり多様だったようで、巨大なクジラからアザラシなどの小さな海棲哺乳類まで捕食していた(※5)。これを聞くとダイバーと戦うという映画の内容にも説得力がある。
サメが主人公のパニック映画は『Jaws(ジョーズ)』(1975年)など枚挙に暇がない。太古の海の覇者だったメガドロンは、スクリーンの中でどんな振る舞いをしたのだろうか。
※1:Martin A. Becker, et al., “Squalicorax Chips a Tooth: A Consequence of Feeding-Related Behavior from the Lowermost Navesink Formation (Late Cretaceous: Campanian-Maastrichtian) of Monmouth County, New Jersey, USA.” Geosciences, Vol.2(2), 109-129, 2012
※2:Cataline Pimiento, et al., “Geographical distribution patterns of Carcharocles megalodon over time reveal clues about extinction mechanisms.” Journal of Biogeogrphy, doi:10.1111/jbi.12754, 2016
※3:Christopher F. Clements, et al., “Experimentally testing the accuracy of an extinction estimator: Solow’s optimal linear estimation model.” Journal of Animal Ecology, Vol.82, Issue2, 345-354, 2013
※4:Cataline Pimiento, et al., “When Did Carcharocles megalodon Become Extinct? A New Analysis of the Fossil Record.” PLOS ONE, https://doi.org/10.1371/journal.pone.0111086, 2015
※5:Alberto Collareta, et al., “Did the giant extinct shark Carcharocles megalodon target small prey? Bite marks on marine mammal remains from the late Miocene of Peru.” Palaeogeogrphy, Palaeoclimatology, Paraeoecology, Vol.469, 84-91, 2017