新型コロナの重症化リスクは「喫煙者」で3倍以上:横浜市大研究報告
ひとしきり収まりかけていた新型コロナだが、ここにきて徐々に患者数が増えてきているようだ。インフルエンザとの同時流行も危惧されるが、横浜市立大学病院の患者データにより、どのような要素が重症化リスクとなるかという研究報告が出された。
それによれば、発症から入院までにかかる時間をできるだけ短くすることが重要で、発症後4日以内に適切な治療を開始する必要があることがわかった。特に、太り気味や肥満の人、LDH(血清乳酸デヒドロゲナーゼ)の数値が高い人、そして喫煙者がリスクが大きく、これらの要素のある人は特に注意が必要だ。
同論文(※)によれば、研究期間は2021年8月から2022年3月までに横浜市立大学病院に新型コロナで入院した141人の患者(56歳から62歳、男性99人)を対象にし、中等症(Moderate group、91人)と重症(Severe group、50人)の2群に分け、どのような要素が両群で違いがあるかを調べた。研究期間は、新型コロナウイルスのデルタ変異体とオミクロン変異体によって患者数が増えた時期になる。
その結果、中等症と重症の患者で年齢に違いはなかったが、ワクチン未接種者で、また男性のほうが女性より重症化しやすかった。発症から入院までの日数が長くなるほど重症化リスクが1.16倍高くなり(オッズ比:95%CI:1.02-1.32、p値0.026)、中等症の患者が3日(±3.6日)だったのに比べ、重症化の患者では8日(±4.2日)だった(95%CI:95%の確率で真の値が含まれる信頼区間、p値:仮説の可能性で0に近いほど高い)。
また、重症化した患者は、太り気味や肥満の人が多く、これまでの研究報告と同様に細胞が損傷していることを示すLDHの値が高くなっていた。特に、喫煙者の重症化リスクは3.7倍(オッズ比:95%CI:1.41-9.68、p値0.008)と高かった。
新型コロナの重症化リスク要素としては、心血管疾患、腎疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺疾患、高血圧、免疫疾患、肥満などが指摘されているが、同研究グループでは腎疾患と肥満で中等症と重症に違いが見られた。また、デルタ変異体とオミクロン変異体の流行期の重症化の違いでは、ワクチン接種をした人が増えたことが重症化リスク軽減に影響していることも示唆された。
新型コロナでは、肺など患者の呼吸器の状態が徐々に悪化し、重症化につながるが、悪化しつつある状態が自分ではよくわからず、適切な治療を受けるまでの期間が延びてしまうことが懸念されてきた。同研究グループによれば、発症後4日以内に呼吸状態が悪化すると重症化する危険性が高くなるとし、発症から入院までの最適な日数は4日以内ということがわかったという。
これらのことから同研究グループは、新型コロナの重症化を防ぐためには発症から入院までの日数をなるべく短くすべきであり、太り気味や肥満の人、喫煙者、LDHの値が高い人は発症から4日以内に適切な治療を受けるべきとしている。特にリスクが大きい喫煙者は、発症したらすぐ治療を受けるくらいのほうがいいだろう。
※:Fumihiro Ogawa, et al., “Severity predictors of COVID-19 in SARS-CoV-2 variant, delta and omicron period; single center study” PLOS ONE, doi.org/10.1371/journal.pone.0273134, 25, October, 2022