「加熱式」と「紙巻き」のタバコを「両方」吸うとどうなるか

なぜ紙巻きタバコの販売額は増えているのか

 日本国内でタバコ製品を販売している企業が加盟する日本たばこ協会が先日、加熱式タバコの販売数量と販売実績データを発表した。それによれば、2022年の第1四半期から第3四半期(4月から12月)の加熱式タバコの販売数量は、前年の同期と比べて約13%増えたという。

 日本たばこ協会は、2020(令和2)年から加熱式タバコの販売実績データを出しているが、国内のタバコ製品の中で加熱式タバコは約34%となり、この割合は増え続けている。一方、紙巻きタバコのほうだが、販売数量は減っているものの、対前年比の販売定価代金はむしろ微増しているのだ。

紙巻きタバコの本数は微減し続けているが、加熱式タバコの販売本数は伸びている。一方、販売額では両者ともに伸びていて、喫煙者が加熱式タバコへ完全に切り替えているわけではないことがわかる。紙巻きタバコと加熱式タバコ:販売定価代金(第3四半期累計、単位:億円):日本たばこ協会のデータよりグラフ筆者作成
紙巻きタバコの本数は微減し続けているが、加熱式タバコの販売本数は伸びている。一方、販売額では両者ともに伸びていて、喫煙者が加熱式タバコへ完全に切り替えているわけではないことがわかる。紙巻きタバコと加熱式タバコ:販売定価代金(第3四半期累計、単位:億円):日本たばこ協会のデータよりグラフ筆者作成

 これは、いったいどういうことなのだろうか。

 紙巻きタバコの販売額が微増を続けている理由は、もちろんタバコの値段が上がったことが大きい。

 だが、紙巻きタバコを吸ってきた喫煙者の中には、加熱式タバコへすっかり切り替えてしまった喫煙者もいれば、家庭や職場では加熱式タバコを、駅前などの喫煙所では紙巻きタバコを、というようにどちらも吸う二重喫煙(デュアルユース)の喫煙者もいる。

 なぜなら、喫煙者の多くは本心では紙巻きタバコを吸い続けたいが、健康懸念や家族など他者への受動喫煙の害といった様々な動機から加熱式タバコへ切り替えているからだ。

 つまり、加熱式タバコの吸い心地には満足できないが、TPOによって仕方なく紙巻きタバコとの二重喫煙をしている喫煙者が少なからずいることになる。こうした加熱式タバコとの二重喫煙者の存在が、紙巻きタバコの販売額微増にもある程度、寄与しているというわけだ。

110万人以上いる二重喫煙者

 では、どれくらいの喫煙者が二重喫煙をしているのだろうか。

 日本国内で行われたインターネット調査(2022年2月1日から28日、75歳以下の2万8124人、うち女性は1万4404人)を分析した調査研究によれば、過去30日間で吸ったタバコ製品の種類は紙巻きタバコのみが19.4%、加熱式タバコのみが11.8%、両方吸う二重喫煙者が6.8%だった(※1)。また、二重喫煙者の割合は男性のほうで多く(11.0%:2.9%)、教育程度による比較では高校以上の教育を受けていない層で二重喫煙者の割合がより低かった(5.0%:7.1%)という。

 この調査研究によれば、日本の喫煙者の7%弱が加熱式タバコと紙巻きタバコの二重喫煙者ということになる。この数字は他の調査研究(※2)とも一致し、日本たばこ協会のデータによる加熱式タバコの販売実績が紙巻きタバコの約1/3という販売額から考えるともっともらしい割合だ。

 そして、20歳以上の日本人の人口を1億人とした場合、この割合で概算すれば110万人以上が二重喫煙の喫煙者ということになる(1億×0.16×0.07=112万)。ちなみに、喫煙率を16%とすると、未だに日本人の1600万人が喫煙者だ。

 しかも、これら喫煙者のほとんどは、毎日のように1箱500円以上するタバコ製品を買っている。まだまだ日本のタバコの値段は安いし、段階的な値上げは消費者を離反させにくい。そのため、紙巻きタバコと加熱式タバコの合計販売額は上がり続けることになる。

二重喫煙はどのように健康に悪いのか

 ところで最近、米国とインドの研究グループが、加熱式タバコのアイコスと紙巻きタバコの二重喫煙がどのように肺の健康を害するのかを検証した論文を呼吸器の専門雑誌に発表した(※3)。

 この研究で同研究グループは、紙巻きタバコ(フィリップモリス、マールボロレッド)、アイコス(HEETS)のタバコ煙を生理食塩水にくぐらせ、これを濾過した抽出物をそれぞれのニコチン含有率と照らし合わせて標準化した物質を濃度100%として使用した。濃度0.1%から5%まで希釈した試料の血清ニコチンのレベルは、0.4ナノグラム/ミリリットルから200ナノグラム/ミリリットルに比定されるという。

 そして、それぞれの試料、あるいは両方を混ぜた試料(二重喫煙に相当)を使い、実験用に提供されているヒトの気道上皮細胞に対して細胞に対する毒性、細胞内のミトコンドリア形態の定量、古くなった細胞内のミトコンドリアを分解する機能(マイトファジー)の活性などを評価した。

どちらもやめるのが吉

 その結果、細胞の生存率は、アイコスのみの抽出物より二重喫煙の抽出物のほうが低く、濃度が濃くなるほど二重喫煙による細胞毒性が強くなることがわかった。また、二重喫煙に相当する抽出物はミトコンドリアによる細胞の活性酸素を多く作り出し、酸化ストレスについても、二重喫煙のものは紙巻きタバコのみアイコスのみのものより、気道上皮細胞へ悪影響をおよぼすのだという。

 また、二重喫煙の抽出物は、ミトコンドリアの形態も異常にし、こうした機能不全に陥ったミトコンドリアを分解するマイトファジー活性も異常(多量発現)になることで細胞死を引き起こす危険性があると指摘している。同時に、二重喫煙の抽出物は、紙巻きタバコのみアイコスのみのものより、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、がんの転移や浸潤などに関係していると考えられる細胞の変質(上皮間葉転換、EMTシグナル)を強く促す危険性があったという。

 以上をまとめると、加熱式タバコへ完全に移行しない二重喫煙者が一定数いるが、二重喫煙の健康への害は紙巻きタバコのみや加熱式タバコのみよりも悪いとする実験結果が出た。二重喫煙は、どちらかのみよりも細胞へ強い酸化ストレスを与え、肺などの呼吸器にもより悪い。

 紙巻きタバコのみはもちろん、加熱式タバコのみでも健康に悪影響をおよぼす。最もいい選択は、紙巻きタバコも加熱式タバコも両方やめることだ。


※1:Satomi Odani, Takahiro Tabuchi, “Prevalence and denial of current tobacco products use: Combustible and heated tobacco products, Japan, 2022” Preventive Medicine Reports, Vol.30, 102031, December, 2022

※2:Satomi Odani, et al., “Heated tobacco products do not help smokers quit or prevent relapse: a longitudinal study in Japan” Tobacco Control, doi:10.1136/tc-2022-057613, 27, February, 2023

※3:Pritam Saha, et al., “The Effects of Dual IQOS and Cigarette Smoke Exposure on Airway Epithelial Cells: Implications for Lung Health and Respiratory Disease Pathogenesis” ERJ open research, Vol.9, No.1, 15, February, 2023